回数券にまつわる話

神戸市交通局では、1997年より民営バスとの共用区間および北神地区(岡場・有野台地域)を除き、 従来から使用していた綴り式回数券の販売を取りやめてしてしまいました。
もともとバスの定期券の割引率は低く、完全週休二日制のサラリーマンが定期券を買うと損をしてしまうため、 通勤客にも回数券の利用が多かったのですが、運賃後払いの神戸市バスでは降車するたびにカードリーダーに通す煩わしさもあって、 朝の通勤時間帯などを中心に降車に手間取り、通勤客から不満の声が出ていました。
そこで交通局ではカードリーダーの読みとり時間短縮のために、残金が減るたびに入れていたパンチ穴を初回のみ入れるようにして、 降車時の時間短縮をはかりましたが、それほど効果があるとは思えません。


● いろんな回数券・・・・「共用回数券」

綴り式からカード式に変わってしまった神戸市バスの回数券ですが、97年に回数券がカード化され、 2000年には市バス単独の回数券は廃止になりました。 しかし、正確に言えば100%綴り式回数券を全廃してしまったわけではなく、いくつかの区間や路線では回数券が残っています。 他社バスとの共用区間で使われる「共用回数券」が神戸市内の共用区間では存在し、現在でも綴り式になっているわけです。
このことについて、西宮太郎さんから、山陽バスでは、以下のようなものがあると言うことを教えていただきました。
舞子線用  市バス・山陽共同運行の舞子駅・学園都市駅発着系統専用(神戸市・山陽共通)
明舞線用  朝霧駅−神陵台間用(神戸市・明石市・山陽共通)
明舞線(対キロ区間用) 伊川谷駅−神陵台間と神陵台以南の区間をまたがって乗るときに通用
垂水線用  垂水駅・垂水鈴木橋・垂水東口発着系統/及び名谷駅・学が丘・学園都市駅線用(山陽バスの単独運行路線専用です)
青山台線用 名谷駅青山台線専用(神戸市・山陽共通)

すなわち、垂水区内を走る山陽バスだけで路線によって5種類もあるのです。
さてさて、神戸市バスの場合はというと、確認できているだけでも他にも次のような回数券があります。

・13系統(明石−寺谷)、14系統(明石−太山寺−名谷)、58系統(神戸学院−学園都市駅)用、神姫パス共用回数券
・20系統(西神中央−栄)用、神姫バス、神姫ゾーンバス共用回数券
・68系統(岡場駅−北神星和台−道場駅)用、神姫バス共用回数券

なお、これらの共用回数券では、その路線以外では使えないのが原則になってます。
ちなみに、150系統、158系統などで使用されていた神鉄バスとの共用回数券については、 神鉄バスのカード対応と同時に無くなり、市バスとの共用区間においては市バスカードと共通扱いになっています。

神戸以外では、尼崎市には尼崎市バスと阪急バス共通の回数券があります。
この回数券は尼崎市内の阪急バスと、尼崎市バスの全路線が利用できる回数券で、当然これとは別に、 尼崎市バスだけの回数券、阪急バスだけの回数券もあります。
また、尼崎市内に限っての利用というこの回数券、阪急バスの尼崎線(阪神尼崎−川西バスターミナル間)では、 尼崎市を越境して、伊丹や川西まで差額を払って乗っても、運転手は何も言わないのです。 (本来は、阪神尼崎〜つかしん前などの市内の区間内で利用できる)。 これは形式だけの尼崎市域専用回数券なのでしょうか?


先述の神戸市バス単独の回数券について追加事項…。
97年に回数券カードが導入され、従来からの市バス単独回数券(綴り式紙券)は廃止になったと思われていましたが、 実はそれ以後も北神地区(五社・岡場発着の路線)では2000年まで綴り式の回数券が発売されていました。
なぜ北神地区でのみ2000年まで回数券が残っていたのかというと、その当時、岡場駅〜藤原台南町間を走る67系統では、 市バスの一般車以外に、観光バスと同じタイプのバスが使用され、この車両にはカードリーダー設備が備わっていないため、 67系統の利用者のために回数券が存在していたのです。現在はすべてが一般車となり、すべてのバスでカードリーダーが備わっていることから、 従来の回数券は廃止となりました。



● A社の回数券でB社に乗れる・・・
回数券は自社のバス路線でしか利用できないのが原則ですが、自社であっても路線によって使えないことがあります。
たとえば、阪急バスの場合、普通回数券および回数券カードでは、梅田−有馬間などの高速バスでは使用できませんし、 阪神電鉄バスの場合も一般路線で使われている210円回数券などは、高速バスはもちろんのこと、 空港連絡バスでの使用ができません。
他にも淡路交通など各社でも回数券の高速バス乗車を認めていない会社は多いのですが、 神姫バスの場合、中国高速バス(大阪駅・新大阪駅−津山・西脇などの路線)に限っては神姫バス発行の金券式回数券が使用できます。 (ただし昼間お徳用回数券は使用できない)
さらには、神姫バスの回数券で共同運行しているJRバスにも乗車することもできるのです。 中国高速バスに乗れることは知っていてもJRバスに乗れることを知らない人が結構いるんじゃないでしょうか…。 もっとも私自身も、そのことを知ったのは、このHP開設してからでした。 大阪駅・津山駅から乗車する場合は、乗車券売り場で回数券を提示し、乗車便の指定を受けることが必要です。

A社のバスでは、A社の回数券を使用するというのが大前提ですが、 このように会社によって、自社線であっても使用できたり使用できなかったりと、 その規定はまちまちだったりしますが、先述の中国高速バスのように、 回数券の相互利用、または特例などによって、A社の回数券がB社で使用できるといったところも各所であるようです。

【神鉄バスの共通制度】
神鉄パスでは、神戸市バスとの共用区間において、神戸市バスの市バス専用カード、昼間カードが使用できます。 また、同じく市バスとの共用区間では市バスの一日券も使用できるとのことです。

【明石市バスにおける共通乗車制度】
明石市営バスでは、2002年よりカード化がスタートしましたが、明石市バスの全路線で神戸市バスカード(昼間カードも含む)が使用できるシステムになりました。 明石市バスのカードでは、神戸市バスの明石駅・大久保駅発着をメインとした西区内の路線(12、13、14、57系統)で使用できるようになっています。 どうせなら、明石市バスカードも神戸市バス全路線で使用できるようにしてもらえればいいのに。

【姫路市内における共通乗車制度】
姫路市内で神姫バスと姫路市営バスとが競合する区間においては、 姫路市営バスでは神姫バスの回数券を、神姫バスでは姫路市営バスの回数券が利用できます。
姫路市内の姫路駅周辺部は国道2号線上を中心に神姫バスと姫路市バスとが競合する区間がありますが、 その競合区間に限って回数券・定期券の共通乗車制度を平成8年からスタートさせました。 たとえば、姫路から日赤病院前までの区間を利用する場合は、神姫バスの回数券で姫路市バスに、 姫路市パスの回数券で神姫バスにも乗車できるという便利な制度です。 共通利用できる区間は神姫バスと姫路市バスが競合している区間に限られますが、 さらに超越して姫路市内ならば競合路線ではなくても利用できるような便利な制度が欲しいところです。

【阪急バス関係の共通制度】
宝塚市北部を走る阪急田園バスでは、阪急バスの回数券カードでそのまま乗車できます。 阪急田園バスと神姫バスと共同運行している三田駅−東部間の路線では、神姫バスの回数券で利用できる制度がありましたが、 現在はその制度も無くなったとのこと(情報…西宮太郎さん)
まったく謎なのが阪急バスの加島線(梅田−加島駅前−阪急塚口)で、 この路線では大阪市営バスと競合する梅田−加島駅前−神崎橋間に限り大阪市営バスの昼間割引回数券が利用できます。 しかし普通回数券は使用できず、また、大阪市バスで阪急バスの回数券・回数券カードを使用することもできません。 これはどうしてなのでしょう?


● 回数券の立ち売り
その昔・・・と言っても1996年頃までですが、三宮駅や神戸駅周辺のバス乗り場に、がま口を首から下げ、手には回数券の束を持ったおじいさんやおばあさんがいました。
この人たちは回数券の立ち売り人で、バスに乗るお客さんに券面額と同じ分だけのお金をもらって回数券をバラ売りしていました。
この立ち売り人を交通局の関係者だと思っていた神戸市民も多かったようですが、まったくの無関係。 立ち売り人は正規の販売所で11枚綴り2000円の回数券を購入し、 バスに乗るお客さんに、その11枚綴りの回数券を1枚1枚ちぎって200円で発売し、 11枚売るごとに200円の収入を得るという小遣い稼ぎの人たちだったのです。
見た限り、この回数券の立ち売りというのは誰でもやれるものではないようで、 ちゃんとそれぞれにシマ(縄張り)があるようでした。また、その縄張りも日替わりで交替していたようで、 日によって、その場にいる人が違っていたのを記憶しています。 この人たちの1日の収入は、いったいどのくらいあったのでしょうか。
三宮の場合、2系統(阪急六甲行)のバス乗り場で待ちかまえれば、一人が回数券を購入すると次から次へと後ろに並んでいた人たちも回数券を購入し、 わずか2〜3分であっと言う間に11枚分売れていたという光景も目にしました。 運が良ければ、4〜5時間立ち売りをしていて、2〜3千円の収入があったのかもしれません。
この立ち売り人、いつ頃から出没していたのかは定かではありませんが、昭和30年代末期にはその姿はあったという人の話を聞いたことがあります。 また、大阪でも市営バスや地下鉄の回数券を1枚売りする立ち売り人が昭和44年頃まで梅田や難波などのターミナルにいたそうですが、 大阪では万博を機に立ち売り人を排除し、その姿は消えてしまったそうです。 しかし神戸市交通局では立ち売り人を排除せず、立ち売り人の回数券バラ売りをずっと黙認していたようでした。
平成になってからは三宮駅周辺くらいでしか見かけなくなってしまいましたが、昭和40年代には三宮駅、神戸駅の他にも、 阪神御影、阪急六甲と言った比較的賑わいの少ないターミナルにもいたようです。

かつて昭和30年代から40年代にかけて、全国的に客から受け取った運賃を自分の懐に入れてチャージ(ネコババ)してしまう運転手や車掌があとを絶たなかったとか。
その運転手と車掌によるチャージ被害を僅かでも少なくしてくれるのが、実は回数券の立ち売り人だったそうで、 乗客の多くが回数券を購入してくれることで、運転手、車掌の運賃授受の仕事が楽になるのと、 回数券利用の割合が高くなることで集まる現金が少なくなり、乗客から受け取った運賃を運転手・車掌がチャージしにくくなるという効果もあったのだということを何かの記事で読んだことがあります。 すなわち、交通局と立ち売り人の利害関係が絡んでいたというわけです。

神戸から立ち売り人の姿が消えたのは、当然、バスカード導入による綴り式回数券の廃止でした。 綴り式回数券がなくなってしまうと、当然のことながら立ち売り人は回数券を購入して客に回数券の バラ枚売りができなくなってしまいます。
昭和50年以後、自動両替装置を備えた運賃箱が整備され、ワンマンカーが当然となり、 運賃のチャージをする車掌・運転士がいなくなったことで、回数券立ち売り人のメリットはなくなります。 それどころか回数券の立ち売り人によって回数券利用者の割合が増加し、 現金収入が逆に減ってしまうことにもなるのです。
もしや神戸市バスが綴り式回数券を廃止してしまったのは、立ち売り人の排除が一番の目的でもあったのでしょうか(笑)?


● 回数券に消費税を転嫁
兵庫県内および周辺府県の民営バスの一部には回数券の販売額がやたらと半端な金額に設定しているところがあります。 普通なら200円券は11枚綴りで2,000円で発売するものですが、いくつかの民営各社では200円券は11枚綴りで2,040円で発売されています。 これは消費税が3%から5%に上げられた97年当時、普通運賃は据え置くかわりに、 定期券と回数券で消費税の転嫁をすることになったためで、3%から5%化した分の差額が 40円だというわけです。(阪急バス、阪神電鉄バスなど)
ただし、神戸市バスや他の市営バス、神姫バスなどの一部の民営パスでは消費税の転嫁をしていないため、 すべての会社でそうした転嫁を行っているわけではありません。
ちなみに阪急バスの場合、綴り式の回数券では消費税転嫁していますが、 2001年から発売しているバスカードについては消費税分の転嫁をしていません。


● 車内で販売している回数券
運転士など乗務員にはなるべく現金を持たせないようにする…というのが昔のバス会社・バス事業者のお偉方の意見でした。 時代も変わり、ここ数年、サービスの一環から車内でも回数券を購入できるようにするバス事業者がだいぶ増えてきました。
神戸市バスや阪急バスなどでは、車内でバスカードが購入できるシステムとなり、 バスカードが運転士から直接購入することができるバス会社は全国的に数多くあります。 また、バスカードシステムを導入していない神姫バスの場合は、 10円券・50円券・100円券・200円券を組み合わせた「セット回数券」を導入し、 2000年2月より車内での販売が開始されました。 このセット回数券は、普通回数券1000円(1100円分)、3000円(3300円分)、昼間お徳用回数券1000円(1300円分)、3000円(3900円分)の4種で、 10円券、50円券、100円券、200円券などがセットになった金券式回数券で、高速バス路線など一部路線を除く神姫バスの全線で使用可能になっているもので、 車内でのみ販売され、営業所窓口などでは発売していません。 (左の写真)
10円券などがついている関係で、私もこのセット回数券はよく利用しています。 ただし購入できるのが車内でのみというのをもう少し改善していただきたい。 バスの運転士から回数券を購入するタイミングというのは意外と難しいもので、 運転士さん自身も、できたら運転に専念したいもの。 セット回数券が営業所・案内所窓口でも発売されるようになってもらえれば有難い。


● 昼間はオトクな回数券
バスの利用状況というものは路線によって違い、 昼間の利用がメインの路線もあれば朝夕の通勤・通学がメインの路線など、さまざまです。
全般的に昼間走っているバス路線というのは、ほとんどの場合閑散としていて、 空で走らせるよりは少しでもお客さんに利用していただきたいと思っているのです。 そこで昼間時間帯に限って割引率を高めた「昼間時間帯用回数券」を導入しているバス会社・事業者が全国にもたくさんあります。 早くから昼間割引回数券制度を導入していたのは神戸市バスと尼崎市バスで、 神戸市バスでは「グリーン回数券」、尼崎では「ひまわり回数券」という名称がつけられ 神戸市バスでは9時半から夕方4時までの降車時に有効、 尼崎市バスは昼間時間帯に運行する指定されたバス(ひまわりバス)で、 ひまわり回数券を使用できるというシステムになっていました。 利用状況は見る限りでは結構高かったように思います。
その後、神姫バスでも「お買い物回数券」という名称で昼間時に使える回数券を導入。 (その後「お徳用回数券」と名称を変更) さらに神姫バスでは土曜・日曜・祝日は終日使用できるようにシステムを変更し、 さらに使いやすくなりました。 このシステムが導入されてからは、私はお徳用回数券しか買わなくなりました(笑) 200円区間を利用する場合は実質約160円、1000円区間での使用ならば実質約800円と、 と〜ってもオトクなのです。
ちなみに、阪急バス・阪神電鉄バスなど、昼間割引き回数券制度を導入していないバス会社は全国的にも数多くあります。 昼間回数券制度を導入していない理由を尋ねますと、割引率の高い回数券導入により減収になるおそれがあるという答えよりもむしろ、 取り扱い券種が増えることへの手間・コストがあげられました。 まあ、A社でできていることがB社でできないってことはないので、考慮していただきたいですね。


● 回数券の今後の課題と意見・要望
まず、各社でバラバラになっている回数券・回数券カードを他社と共用にするか、統一するなどの取り組みをしていただきたいなと思います。
まずは、スルッとKANSAI加盟のバス会社・事業者全社で使用できる共通回数券制度(スルッとKANSAIカードではなく、割引きのある回数券カードとしての共通制度)。 スルッとKANSAI加盟各社でバスカードを共同にすることで事業者側にとってはカードの制作コスト、管理コストなどが若干抑えられるはずだし、 利用者にとっても複数のカードを持たずに1枚の回数券カードを買うだけで済むのだが…。 あまりに広域すぎてそれが無理ならば、エリアごとに回数券カードの共用を実現してもらいたい。 とりあえず兵庫県内のみで神戸市・阪神間の「神戸市バス、尼崎市バス、伊丹市バス、阪急バス、阪神電鉄バス、 阪急田園バス、神鉄バス、神戸市運輸振興バス」の8社のほか、 これからカード化を予定している山陽バスと、Jスルーに加盟している明石市バスの合計10社を加えての兵庫県内各社のカード共用化は、 スルッと各社の回数券カード一本化よりは実現性が高いだろうと思う。 できたら神姫バスや神姫ゾーンバス、姫路市バスもカード化してもらえれば最強だろうが、そこまでは無理だろうな…。



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