■ 第1週 (第1〜6回)
時代は昭和35年8月、丹波篠山。
11歳の神沢泉(山下結穂)は母親の神沢ふみ(樋口可南子)と二人暮らし。
農業のかたわら、杜氏の親方であった父親は出稼ぎ先の灘で急死して以来、
ふみは残った水田を耕して生計を立てている貧しい農家だった。
ある日、泉が友人たちと川遊びをしている時に一人の少年と出逢う。どことなく無愛想な
少年を連れ、泉は山奥の洞窟へと行くが、その一方で、少年がいなくなったと町では
大騒ぎになっていた。実はその少年は灘の由緒ある榊酒造の大旦那・庄一郎の孫・拓也(比嘉タケル)だったのだ。
ふみに縁談の話が舞い込む。ふみの亡き夫の兄・修造(新井康宏)夫婦がすすめる縁談で、
相手は面識のある郵便局員の藪田(丹羽貞仁)だが、ふみは修造夫婦に、この縁談話を
きっぱりと断る。
9月のある日、丹波地方を台風が襲い、ふみの住む家と水田が致命的な被害を受けてしまう。
高価な耕耘機を買ったための借金を背負ったまま、生活の糧を失ったふみと泉は、
ふみの義兄・修造の家へ居候を始めるが、居心地は良くなかった。
そんなとき、茂吉(塩見三省)がふみの元を訪れ、灘の榊酒造に住み込みで働かないかという
話を持ちかけてくる。その話を一旦は断ったふみであるが、悩んだ末に、丹波の家と田んぼを捨てて
灘の由緒ある榊酒造に住み込みで働く決心をする。しかし、泉は灘へ行くことに猛反対するが、
母と二人で過ごした夜、亡き父が買ってくれたドロップの缶を開けて、泉も灘へ行くことを決める。
丹波篠山を離れ、灘へ旅立つ日、いつも意地悪だった従兄弟の良夫(曽谷聡紫)が太鼓のバチを泉に渡し、
秋祭りの神輿の太鼓打ちをさせてくれる。女では初めて、神輿の太鼓打ちをした泉だった。
■ 第2週 (第7〜12回)
昭和35年10月、灘の榊酒造に住み込みで働くことになった泉とふみは、灘へ着いた早々に
拓也の突然のかんしゃくや原因不明の熱に悩まされ、拓也の看病に追われる。
ふみは拓也と家事にかかりきりで、泉と過ごす時間はほとんどなかった。
なかなか母に甘えられない泉は、拓也の存在が母との距離を隔てていると感じるのだった。
そんなある日、本格的な酒造りが始まり活気づいてきた蔵に足を踏み入れようとした泉を
茂吉と庄一郎がいさめる。泉は女が蔵に立ち入ることを許されないことがどうにも納得がいかず、
庄一郎に食ってかかるが、庄一郎は泉に酒造りの奥ゆかしさを教える。
久しぶりに休日をもらったふみは、泉を連れて神戸に出かけるが、そこで榊家の蔵人、
門田(山西惇)が酔っぱらいと間違えられているところに出くわす。毅然とした態度で
門田への誤解を解こうとしている母の姿に泉は驚く。
一方、蔵では、現当主・信太郎(風間杜夫)の方針で、新しい機械を導入した酒造りが
試みられようとしていた。しかし、庄一郎たちは信太郎の意見に対立しがちだった。
仕事では父と対立しがち、拓也は心を開かないなど、信太郎の悩みは尽きなかった。
そして信太郎は、拓也への見舞いとして泉から花を渡されていたが、息子・拓也と
喧嘩したばかりで拓也に花を渡せないままでいた。それをわびようと、信太郎は泉を
自分の部屋に招く。そこで聴いたジャズのリズムに泉は心惹かれ、二人で仲良く
ダンスを始める。それを陰で見ていた拓也は、ふみの前で大暴れするが、ふみに
こっぴどく叱られる。
■ 第3週 (第13〜18回)
昭和36年1月、泉たちが灘に来て初めて迎える正月、地元の旧家でもある榊家には
酒問屋や出入業者、職人など、大勢の年始客が訪れる。当主はその一人一人と
挨拶を交わすのが習わしであった。
そんな一方、泉は、榊家に遊びに来たクラスメイトのともみ(高松志穂)と庭で
ヨーグルトを食べようとしているところをふみに止められる。
納豆やヨーグルトなど、蔵に菌のつく恐れのある食べ物は
榊家では厳禁なのだった。それをふみに知らせたのは拓也だった。
そのことが原因で、ふみと泉は、りんから責められる。
奥でのゴタゴタに庄一郎は、蔵を守っているのは蔵人だけではない。と、
女たちにたしなめる。その庄一郎の言葉は、榊家で暮らす人々の使命を感じる泉だった。
拓也は次第にふみになつくようになる一方で、泉に対しては生意気だと
意地を張る。泉は、そんな拓也に母を取られてしまうようで気が気でならない。
ある日、泉は信太郎から拓也と一緒に剣道を習うように頼まれる。
泉が剣道を始めてから、拓也と泉はいっそう互いにライバル視し合うようになる。
一方、りん(馬渕晴子)は榊家の跡取りとして不似合いな拓也の乱暴さや
新しい酒造法の導入など、伝統ある榊家の秩序が乱れ始めたのは、泉とふみのせいだと考え、
次に何か問題を起こせば暇を出すとふみに申しつけ、りんは泉に対し『蔵を大切にするように』と
注意する。しかし、泉は入ったこともない蔵を大切に出来ない、守ることなんて出来ないと反発し、
とうとう女人禁制の蔵へと忍び込む。
りんたちが、ふみを榊家から出す相談をしているところを立ち聞きした拓也は
信太郎に『ふみを辞めさせないで』と頼みに来る。久しぶりに拓也のほうから
話しかけてきた拓也に、信太郎は感激する。
■ 第4週 (第19〜24回)
泉のことを何かにつけて軽視する拓也に対し、仲良くなりたいと思いながらも、ふみを取られそうな
気がして、泉は拓也に対して意地を張ってしまう。
昭和36年6月、剣道大会が開かれ、拓也と泉が対戦することになり、試合では拓也が勝ってしまうが
試合の判定結果に泉は納得できない。
傍目には、反目しあってばかりいる泉と拓也であるが、
ふみには、どうしてもそれだけではないと思うのだった。
中庭で庄一郎の立ち会いのもと、再試合を始めることとなるが、駆けつけた信太郎は
剣道は果たし合いみたいなことをしてはいけないと二人の再試合を止めに入って事は収まるが、
勝負に大きくこだわる泉は、ふみに抱きつき悔し涙を流す。
拓也にだけは負けたくないという気持ちを庄一郎に打ち明けた泉は、
庄一郎から、相手に勝つには、相手のことをよく知ることだと教わる。
泉は庄一郎のアドバイス通り、拓也のことをもっとよく知ろうとし始める。
そんな時、突然、古くからの杜氏である茂吉(塩見三省)が榊酒造に姿を見せる。
酒造りの近代化を榊酒造にも取り入れようと奮闘している信太郎に、
茂吉は引退するという話を持ち出す。茂吉は新しい酒造法の導入には自分は不必要だと考え、
榊酒造から去ろうとしていたのだった。
榊家の庭で、茂吉は拓也に、拓也の亡き母親の話を聞かせる。
6月末、榊酒造では、初呑み切りを迎える。
初呑み切りとは、タンクの飲み口を切り、冬の間仕込んだ酒の味を初めて確かめることで、
そこに藍色の二重丸をそげ付けた利き猪口に酒を注ぎ、色、香り、味を確かめる恒例行事だ。
榊酒造を辞める決心をした茂吉が、榊酒造を去る日が近づいてきた。
亡き母の思い出を語ってくれた茂吉への恩返しにと、拓也は蔵にこもって絵を描き始めるが
出来映えに納得がいかず、スケッチブックをゴミ箱へ捨ててしまう。茂吉が去った朝、拓也は
ふみにしがみついて、泣きじゃくる。それを見ていた泉は感極まって家を飛び出し、一人、
浜辺でたたずんでいると拓也がふみを連れて一緒に泉を迎えにやって来た。
泉は拓也の意外な思いやりに驚くのだった。それを陰で見ていた信太郎は翌日、
ふみにプロポーズする。突然の信太郎のプロポーズに、ふみは驚くばかり。
■ 第5週 (第25〜30回)
信太郎からのプロポーズを断ったふみは、心の奥底では信太郎への愛情が育まれていた。
しかし、信太郎の酒造りの夢の邪魔すまいと決意したふみは翌朝、泉を連れて榊家を出ていく。
神戸に来たふみと泉は、食事で立ち寄った湊やという居酒屋で、ひょんなことから住み込みで
働くこととなる。
1週間後、偶然2人が神戸にいることを知った信太郎は、ふみや泉への思いを拓也に打ち明けると、
拓也は一緒に2人を探そうと言い、父子ともども神戸へと向かう。
ふみの働く居酒屋を訪れた信太郎は『一緒に家族になりましょう。僕があなたを必ず守ります。』と、
ふみを説得。四人の心が一つになり、ふみと泉は再び榊家へ戻って来ることになる。
昭和43年。大学1年生になった泉(佐藤夕美子)は、家に内緒で社交舞踏研究会に入り、
近く開かれるダンスパーティーに向けて練習に明け暮れる忙しい毎日を送っていた。
そんなある日、泉は、庄一郎の誕生祝いに一緒に出るようにと、ふみから告げられるが、
その日はダンスパーティーの日だった。そして当日、拓也(岡田義徳)のはからいで、
ふみが大学のダンスパーティー会場に姿を見せる。
■ 第6週 (第31〜36回)
ダンスパーティー会場に現れたふみと鉢合わせした泉は、大学という聖域に母が踏み込んだことに
反発を感じる。ふみは信太郎と結婚したことで泉の人生を変えてしまった責任を感じ、
拓也と泉を幸せにしなければという気持ちから榊酒造を守ろうとしていたのだった。
そんなふみの気持ちを泉は知る由もなく、互いの心はすれ違ってばかりいた。
一方、ダンスパーティーで、ふみと万作(大場泰正)が踊っている写真が新聞記事に
なっていたことで一騒動。
ふみは庄一郎から、町の有力者の集まりでダンスを教えて欲しいと頼まれ、ふみは困惑する。
それを聞きつけた信太郎は、近代化を目指す榊酒造に古いやり方は必要ないと庄一郎にきっぱり言う。・
この騒ぎのすべてが自分のダンスに始まったことに責任を感じ、落ち込んだ泉は、
万作に会おうと神戸のバーに出かけるが、そこで偶然、拓也とまゆ子(遊井亮子)に出会う。
拓也は万作を殴りつける。
■ 第7週 (第37〜42回)
ある朝、庄一郎とりんが『あとを捜すべからず』という置き手紙を残して旅に出てしまい、
家中が大騒ぎになる。
一旦、榊家に戻ってきた庄一郎を、泉と拓也は引き留めようとするが、
『いつも榊の大旦那として68年間、ずっとこの家にいて蔵を守ってきたが、
そろそろ好きにさせて欲しい。蔵以外の場所を覗かせてほしい。』と言うと、
泉も拓也も庄一郎を引き留めることは出来ない。
『誰が一番最初に見つけるか、競争や・・・・』この庄一郎の一言に、泉の心は大きく揺れる。
ふみは庄一郎たちを黙って行かせたことで泉と拓也を叱りつけるが、
信太郎は『そろそろ好きにさせて欲しい』との庄一郎の言葉に悩み、
物思いにふけるようになる。
そんな信太郎を心配したふみは、泉に拓也のことを頼み、信太郎と夫婦二人で旅行に出かけることに。
一方、泉と拓也の二人だけになった榊家に、万作とまゆ子が訪ねて来た。
拓也が泉に心惹かれていることを知るまゆ子は、『ほんまの姉と弟やないから、あなたたち・・・・』と、
二人の前で言い放ち、泉はまゆ子のその言葉に驚く。
榊家で育ててもらった恩を榊家にも拓也にも返したいと反論する泉だったが、それを聞いていた拓也は
怒りだし、自分のことに怠けていると厳しく指摘する。泉は拓也の言葉に大きな衝撃を受ける。
■ 第8週 (第43〜48回)
雷雨による突然の停電でけがをした泉の手を拓也はそっとやさしく触れ、傷口を口に含む。
それは拓也から泉への恋の告白でもあった。それを受け入れられない泉は、手を離すと
拓也はたまらず雨の中を飛び出していく。
その夜、信太郎と二人で旅行中であるはずのふみが一人で榊家へ戻ってきた。
信太郎に深い悩みがあると知り、一人にしてあげようとの配慮だった。
そして泉は信太郎を迎えに行く。
翌日、拓也はまゆ子のアパートに転がり込んでいた。
泉はまゆ子に頼んで、二人だけにしてもらい、『私があなたのことをどう思っているのか
いつか必ず答えを出す』と約束する。
一方、拓也のことでまゆ子と会ったふみは、泉と拓也との仲を疑い始め、
拓也と隣り合わせだった部屋を下に写すよう、泉に言う。
母の勝手な勘ぐりに、泉は腹を立てるが、姉と弟との関係にはもう戻れないと、
これからの拓也との関係に戸惑っていた。そんな折、拓也が東大を目指すと宣言し、
泉たちは困惑する。
■ 第9週 (第49〜54回)
ふみは経営状態の悪い榊酒造に不利な噂が流れてはと、泉にダンスをしばらくやめるよう
言いつける。泉は自分のことに気を取られて家族の危機に気づかなかったことを旅行から戻った
庄一郎にいさめられる。同じ頃、拓也は次期当主としてしか自分を見てくれない両親や榊家という家に
疲れ切っていた。
拓也は泉に『一緒に東京へ行こう』と誘うが、泉は断る。
その夜、家を出た拓也が京都で警察に捕まったとの連絡が入り、家中が騒然となる。
拓也と何があったのかと聞かれた泉は、拓也への思いを告白しようとしたが、
ふみは厳しくさえぎった。泉もふみも、互いの心の傷みを感じながらも、どうすることもできなかった。
■ 第10週 (第55〜60回)
学園紛争で、東大の入試が中止になり、今後の身の振り方を信太郎に問われた拓也は
『18歳の誕生日までに決める』と宣言する。泉はその日こそが拓也が家を出る日だと察するが、
どうしていいのかわからない。
そんな泉に、まゆ子は『私があなたやったら絶対彼から離れない』と責める。
拓也の誕生日が迫ったある日、一緒に東京に行くと切り出した泉を、拓也は
『一人で渡らなあかん橋もある』と、静かに拒む。代わりに二人は最初で最後の抱擁をする。
翌朝、拓也の家出が発覚し、家中が大騒動になる。信太郎は動揺するりんやふみの前で
拓也とは絶縁すると言い渡し、仕事に戻る。
泉も拓也のことを忘れようと、万作とペアを組んでダンスの練習を再開する。
もはや拓也を探そうとはしない、信太郎にならい、榊家は拓也不在のまま日常に戻ったかのように
見えたが・・・・。
■ 第11週 (第61〜66回)
20歳の誕生日を迎えた泉のために、榊家では家族そろって食事をするはずだった。ところが、
工場の機械故障で信太郎もふみもそれどころではなくなる。泉は仕方なく、万作と二人で湊やに出かける。
その後、榊酒造の経営難が痛いほど分かった泉は、ダンス大会後は大学を中退して榊酒造を手伝いたいと
信太郎にうち明けるが「あせったらあかん」と、考え直すように言われる。そして二人は明日、酒を
飲もうと約束を交わすのだった。しかし、榊酒造の経営状態の悪化を食い止めようと昼夜を問わず
必死に働き続けた信太郎は倒れてしまい、そのまま帰らぬ人となってしまう。
突然の我が子の死に激しく動揺するりんに代わってふみは涙一つ見せず、気丈に葬儀の準備を進める。
葬儀を終えた夜、泉は亡き父と飲むはずだった露誉をふたたび当主となった庄一郎と口にした。
泉は、拓也に父の死を知らせようと上京するが、居所がつかめず心細さから泣き崩れてしまう。
そのとき、ラジオから聞き覚えのある歌が流れ始めてきた。
■ 第12週 (第67〜72回)
信太郎の死後、庄一郎が再び当主として榊酒造の面倒を見ることになった。夫に先立たれたショックから
ふみは眠れない夜が続き、疲れ切っていた。奥のことに手が届かない母を見かねた泉は、大学を辞めて
榊酒造を手伝いたいと言い出すが、庄一郎はそれを許さない。
一方、りんは、拓也に代わる榊酒造の次期当主のことを考えて、一色酒造の三男との縁談を泉に勧める。
しかし、庄一郎は泉に無理な縁談を迫ったり、経営難だからといって桶売りするくらいなら自分の代で
蔵を閉じると言い出す。泉も一度は一色酒造との縁談を受け入れる気になるが、万作に勇気づけられて
見合いを断る。決意させたのは、亡き信太郎が我が子を思いやって、万作の父・恩田慎作(宍戸錠)に送った
1通の手紙だった。
泉は庄一郎に、『榊酒造を今つぶしたらあかん』と迫り、自分をやとってくれともう一度頼む。
その頃、東京の慎作の外科診療所につとめるまゆ子の元へ、拓也が突然姿を現した。
■ 第13週 (第73〜78回)
昭和44年10月、大学を中退した泉が榊酒造に働き初めて3ヶ月が過ぎた。
信太郎の急逝、拓也の家出と、この2つが重なり、榊家は大きく変わっていった。
経営のほうも、技師アシスタント・小野寺(美木良介)のすすめた桶売りで危機を乗り越えていた。
そんな時、技師のアシスタントとして小野寺の妹・環(小沢真珠)が入社してきた。
蔵人たちは当初、女が蔵に入ることで猛反対するが、利き酒などで彼女の才能を認め、周囲も徐々に
態度を軟化させてきた。
その姿に刺激された泉は、自分が何をしていいのかわからず、通常の仕事のあと一人で酒屋まわりをし、
5件も契約を取ってきてしまう。ところがそれが思わぬ騒動の引き金となる。頭ごなしに商売をされた
問屋が取引を停止するとクレームをつけてきたのだ。当主の庄一郎が出向き、頭を下げて解決したが、
泉は自分の無力さを改めて知る。
ある夜、泉は蔵人たちの『麹と寝る』という言葉に惹かれ、密かに女人禁制の蔵に入り、モロミの発酵する音を
聞きながら、つい寝込んでしまう。翌朝、蔵で眠る泉が発見され、大騒動になり、庄一郎らから叱られるが
環は泉をかばう。そして泉の酒造りに対する気持ちは、さらに強くなる。
■ 第14週 (第79〜84回)
泉は新しい酒を造るため、かつて杜氏をしていた茂吉の助けを借りようと丹波を訪ねるが、
そこで拓也と再会する。拓也も茂吉に酒造りを教えてもらおうと、まゆ子とともに茂吉のところに
住み込んでいたのだ。茂吉は拓也と泉の双方から頼まれて返事に困惑する。
それを聞いたふみは、二人で酒造りをすればいいと持ちかけるが、拓也は榊に戻るつもりはないと断り、
父や祖父にも造れなかった自分の酒を造ると言い張る。茂吉は結局、泉の頼みを断るしかなくなり、
泉は仕方なく、環と二人で新しい酒造りをすることを決心、庄一郎の許しを得る。
一方、茂吉は、灘の志水酒造虎ノ介(嶋田久作)の誘いで、拓也を連れて灘へ行く。
拓也は灘という点に引っかかるが、ふみになだめられ志水酒造で働く決心をする。
虎ノ介と榊酒造へ挨拶に訪れた拓也は、庄一郎や泉たちの前で榊を越える酒をつくりますと宣言する。
そして泉は環と、拓也は茂吉と、それぞれ新しい酒造りに挑戦することになる。
■ 第15週 (第85〜90回)
泉たちが吟醸酒作りをはじめて3度目の仕込みの季節を迎えた。今回失敗したら2度と蔵には
入らないと泉は庄一郎と約束しており、これが最後のチャンスだった。志水酒造でも
拓也と茂吉の酒造りが進んでいた。
泉と環は的確にタイミングを見極め、しぼりの作業を始める。泉と環、蔵人たちの汗と努力の
結晶、しぼりたての新酒を口に含んだ泉の表情が曇る。余分な香りが混ざっていたのだ。
庄一郎はおり引きの日に利き酒をし、それまでに異臭が消えなかったら泉の酒造りは
終わりにするよう泉に申しつける。
一方、小野寺は露誉を一般受けする甘口に変更するよう進言する。だが庄一郎は榊の味を変える
わけにはいかんと小野寺にクビを言い渡す。ふみは榊酒造にとって小野寺は必要な人だと庄一郎を
説得し、庄一郎を翻意させた。
利き酒の日、庄一郎は泉の酒を『駄目やな・・・・』と。すると小野寺は『もう一年チャンスを与えてやってください』と
庄一郎に訴える。
■ 第16週 (第91〜96回)
泉と環は3年目の吟醸酒造りを終え、さらに研究を続けていた。
デビューした万作は、レギュラーを持つ売れっ子となり、テレビで若いファンの人気を集めていた。
そんなある日、拓也が志水酒造の職人として榊酒造へ使いに来る。『めしがまだやったら食べて行け』と
庄一郎に声をかけられた拓也は、
板場の片隅に座り、複雑な思いでふみの給仕を受ける。そこに泉が現れ、湊やで会いたいと拓也に告げる。
翌日二人は、久しぶりに酒を酌み交わす。
ある日、まゆ子が1歳半の拓実を連れて榊家へ挨拶に訪れた。母の看病でしばらく神戸にいるのだという。
ふみは一目で拓実が拓也の子供だと悟る。まゆ子から拓也には知らせていないと聞いたふみは、
せめて拓也にだけは知らせるよう勧める。だが、まゆ子は渋る。
ふみは志水酒造に茂吉を訪ね、拓也にまゆ子と拓実に会わせてやってほしいと頼む。そして折を見て
茂吉は拓也に、まゆ子が拓也の子供を連れて神戸に来ていると教える。一方、泉もふみから、
まゆ子が拓也の赤ちゃんを連れてきたと聞かされ、大きなショックを受ける。
■ 第17週 (第97〜102回)
泉の吟醸酒の熟成具合を見るため、初めてタンクの口を切る「初呑みきり」の日が来た。
庄一郎は一口飲んでうなずき、合格点を与えた。それを見て業務を一手に仕切っていた小野寺は、
妹の環に酒造記録を貸してくれないかと頼むが、環はそんな大事な物は勝手に渡せないと断る。
榊酒造は桶売りをするようになってから経営的には安定してきていたが、1〜2年前から取引を
始めた問屋が理由も告げずに来年以後の取引を中止すると言い出してきた。
このままでは榊酒造は倒産すると、小野寺はこれまで桶売りの相手先だった大手の沢村酒造との合併を
庄一郎に進言する。
合併すれば、榊家の銘酒・露誉の名は残り、吟醸酒造りも続けられるという。これに庄一郎と泉たちも悩む。
ふみに真意を問われた小野寺は、合併が決まれば自分を社長に就任させるとの話が先方からあったとうち明け、
『私と一緒に露誉を守っていきませんか』とふみにプロポーズする。揺れ動くふみは、茂吉の助言を求めることにした。
■ 第18週 (第103〜108回)
昭和47年夏、沢村酒造との合併話も白紙に戻り、問屋との関係も修復した榊酒造は平穏さを取り戻していた。
ある日、りんはふみと泉を呼び、拓也とまゆ子がどうなっているのか尋ねる。
ふみたちが、病弱のまゆ子の母親を転地療養で新潟へ行くものの、拓也は灘に残るらしいと話すと、
りんは拓也とまゆ子をきちんと結婚させるよう説得してほしいと泉に言う。泉は複雑な気持ちになるが、
そろそろ自分の気持ちにも決着をつけようと、拓也を湊やに呼んでまゆ子たちと新潟へ行ったほうがいいと
勧める。そして拓也も泉の忠告を受け入れ、親子3人で新潟へ旅立つ決心をする。
拓也たちが新潟へ行くのを前に、りんはひ孫の拓実を連れ、ふみと3人で散歩に出た。
途中で立ちくらみを起こしたりんを支えようとしたふみは、船べりに後頭部を打ち付けてしまう。
その場はなんともなかったが、拓也親子を送り出し、拓也と泉の作った酒を飲んだあと、ふみは倒れて昏睡状態に陥り、
そのまま帰らぬ人となる。
■ 第19週 (第109〜114回)
昭和47年秋、ふみが死んで3ヶ月が過ぎ、ふみが死んだショックから立ち直れないままでいた泉は、
仕込みの時期になっても酒造りの方向を決めかねていた。だが、ふみの死んだ顔が幸せそうだったとの
万作の何気ない一言で、泉はようやく吹っ切れ、最後のチャンスにと、生もと造りに挑戦しようと決心し、
庄一郎と蔵人たちを懸命に説得するが、時間も人手もかかる生もと造りには、なかなか賛同が得られなかった。
その時、りんが私はふみの命をなくした、そのふみが残してくれた榊のために泉の望むように造らせてやってくださいと
庄一郎に頭を下げる。ようやくみんなが納得し、翌年1月、泉を中心に夜を徹しての仕込みが始まる。
1ヶ月後、濃厚でたくましく、命の力にあふれた酒ができた。庄一郎は泉の労をねぎらい、榊の半被を着せかけ、
泉を榊酒造7代目当主とした。
昭和55年、泉が切り盛りする榊へ、拓也の子・拓実が警官に連れられてやってきた。鞄に酒瓶を入れて
街をうろついていたらしい。
■ 第20週 (第115〜120回)
昭和55年、泉は榊酒造7代目当主として多忙をきわめていた。
そんなある日、志水酒造で杜氏をしていた茂吉が蔵人でいいから榊酒造で働きたいと言ってきた。
泉はりんの反対を押し切って次の杜氏に茂吉を迎える。しかし、もしもし次の杜氏は蔵人の門田と
決まっていただけに、蔵人たちの間で動揺が広がり、けが人まで出るようになる。
そんな折り、死んだ信太郎のいとこで、船乗りと結婚後、ハワイで暮らしていたはるか(野川由美子)が
離婚して榊家に戻ってきた。りんは榊のしきたりを知っているはるかに、奥のしきりを任せるが
早速、食堂予算の見積もりを巡って、泉とはるかは衝突する。
一方、万作は芸名・桂万吉としてラジオ番組を持ち、泉をネタにリスナーから人気を受けていた。
ある日、万作はスタジオに遊びに来ていた拓也の息子・拓実を出演させてしまう。
そんな時、はるかが泉に、私生活も蔵人も情だけでつながっていると当主の命取りになると厳しくたしなめる。
■ 第21週 (第121〜126回)
泉は万作からのプロポーズを受け入れるが、自分のプロポーズをあっさり受け入れたことが今ひとつ腑に落ちず、
なぜ急に結婚する気になったのか泉を問いつめる。そんな万作に泉は反発し、万作も一人になって考えたいと
旅に出てしまい、何の連絡もないまま1週間がすぎる。泉は万作のことで頭がいっぱいで、はるかから嫌味を言われ、
環からも酒造りに専念すべきだと忠告される。
ある日、新潟の拓也から手紙が届いた。万作が立ち寄ったという。万作はかけがえのない人だ、そろそろ自分の心に
育んでいるものに素直になってくださいとあり、同封された拓実の手紙には、恩田さんを蔵のお父ちゃんにしてあげて
くださいと書いてあった。泉は新潟へ行こうと決意するが、そのとき、万作のラジオ番組「今夜も離さない」が始まる。
泉は番組の青春相談コーナーに電話をかけ、胸の内を告白する。泉の思い切った行動に、万作はうろたえるが、
それでも嬉しかった。昭和56年、ようやく二人はゴールイン。結婚式当日、うちかけ姿の泉は、りんに伴われて
信太郎とふみの仏前に結婚の報告をする。そして伴侶を得て心機一転した泉は、榊酒造のテレビCMを流すことを
思い立つ。
■ 第22週 (第127〜132回)
1995年1月15日、泉は46歳、その娘・そよぎは13歳になっていた。
泉は榊の蔵と母屋を残して酒の文化資料館を作る計画を進めていた。
万作の父・慎作は東京から榊酒造と同じ東灘に診療所を開設、拓也の息子・拓実はそこに住み
研修医をしていた。
そんな時、新潟で名杜氏として名を馳せる拓也が久しぶりに榊家へ帰ってくる。
拓也が榊家を飛び出したのは20数年前のこの日だった。
泉は拓也に露誉を注ぐが、拓也は最近の露誉は飲む人を裏切っていると泉に厳しく指摘し、
同じ精米歩合で作った酒を差し出す。
その日、拓也は慎作の所に泊まって、拓実に会って翌日帰ることにしていたが、
万作もりんも、ゆっくり話したがっているでもう一晩泊まっていけと勧め、拓也はそれに従う。
その夜、拓也は突然、「榊に戻ってはいけないか」と言い出す。これに対して泉は
「一度渡った橋は戻ってはいけない」と申し出をきっぱりと断る。
そしてその翌日、1月17日早朝、阪神大震災がおこる。
■ 第23週 (第133〜138回)
阪神大震災のあと、泉万作らを中心に、倒れた建物や散乱した資材の整理が始まった。
はるかも、リュックを背負って大阪から応援に駆けつける。
がれきの下から見つかった井戸も無事で、泉は近所の人にも水を汲み上げて分けてやる。
泉の心に営業再開の気持ちが高まり、課長の鈴木と在庫確認をすると、わずかに残っていた
露誉をはるかが調達したトラックで送り出すことにするが、そんな泉の姿勢に万作は、
そんなことよりも生活の確保のほうが先ではないかと反対するが、泉はきかない。
1月23日、損傷の無かったビンやアルミ缶などが次々と出荷されていく。
一方、そよぎは、家族よりも酒造りに精を出す母や、意見を異にしながらも最後には母の
言いなりになってしまう父に嫌気がさし、両親との間に何かにつけて距離を置こうとしていた。
ある日、そんな家族の様子を見かねたりんは、泉を呼んで生産再開は後回しにして、その前に
しなければならないことがあるだろうと苦言を呈する。
■ 第24週 (第139〜144回)
震災直後には何もなかった井戸が濁ってしまった。それを見たりんは、生産再開に踏み切れば
良くないことが起きると泉に訴えかけるが、泉は聞く耳も持たない。しかし、再開に向けて動き出しても
水はおろか、職人の手も足りず難航する。そこへ万作が、学生時代の友人という水道屋の遠藤を連れてくる。
遠藤は井戸掃除と工場のパイプ検査を引き受ける。
一方、そよぎの心は酒造りにばかり気を取られている泉と、泉の言いなりになっている万作への不満を募らせ、
ますます距離を置くようになってしまう。そしてとうとう、傷ついた猫の手当をきっかけに、しばらく湊やで
暮らすことになる。それを見かねた茂吉から酒造用の水の手配よりも先にすることがあると助言された
泉と万作は、湊やにそよぎをたずねる。そこでそよぎは、亡くなったおじさんはお母さんの何だったのかを問い、
泉は戸惑う。
■ 第25週 (第145〜150回)
万作や門田らの努力で、ようやく瓶詰めのラインが復旧。翌日の出荷を前に次々と露誉が瓶詰めされる。
泉、万作、虎介、鈴木、門田、湊やの光太郎らから歓声が沸き上がる。全員で新生・榊の最初の一杯を口に含むと、
微妙に味が違う。成分調査の結果、鉄分が規格の上限ギリギリだった。
火入れの後のフィルターに微量の鉄分が入っていたらしく、洗浄には一晩かかるという。
課長の鈴木は規格内だから問題ないと主張するが、門田はこれでは榊の銘酒・露誉ではないと猛反対。
泉は翌日の出荷をあきらめるべきか悩むが、震災後、復旧までがんばってきた従業員のためにも、
やはり出荷しようと決意するが、万作は苦しい時にこそ、極上の一滴を造るんだと強固に反対するが、
泉は出荷は当主として判断したのだと蔵人たちの前で言い放つ。
万作はたまらず部屋を出る。だが、万作の言葉は泉の心を動かし、結局、翌日の出荷は中止することになる。
■ 第26週 (第151〜156回)